【結論】IBMの市場参入に対する対応策の回答例がわかる。
ケース例題6:われわれのクライアントは、米国の東海岸地域を営業拠点とする中規模の教育サービス企業であり、主にコンピュータ関連の研修プログラムやコンサルティング業務を提供している。つい先日、彼らはIBMが自社の事業セグメントに参入しようとしていることを知った。IBMの動きに対して、彼らはどのように対応したら良いだろうか?
【ケース回答例】
問題の内容と目的を確認させて下さい。われわれのクライアントはコンピュータ関連の教育サービス企業であり、自社の事業セグメントに参入しようとしているIBMの動きに対して、どのように対応すれば良いかを知りたがっていると言うことですね。クライアントの目的は、IBMの市場参入を阻止するか、または、自社のマーケットシェアをできる限り死守することだと思いますが、このような理解でよろしいでしょうか?
ーはい、結構です。
この他に私が頭に入れておくべきクライアントの目的はありますか?
ーいいえ、ありません。
クライアントの事業セグメントにおける競合状況を教えていただけますか?
ークライアントと同じサービスを提供している企業が、クライアントを含めて3社存在し、この3社でシェアの大部分を占めています。この他、1〜2社の顧客のみと独占的に取引を行っている小規模な企業が3社存在します。
クライアントのマーケットシェアはどのくらいですか?
ー東海岸地域におけるシェアの24%です。
小規模な企業を除くクライアントの競合2社は、IBMの参入を阻止するために、どのような対抗策を講じているかわかりますか?
ーいいえ。良い質問ですが、このケースではその点は関係ないと考えて下さい。
私は、クライアントがとるべき戦略を、大きく3つの論点に分けて考えたいと思います。第一にIBMの参入を阻止するための戦略、第二に現在のシェアを死守するための戦略、第三に新規顧客を獲得するための戦略です。
ー詳しく説明して下さい。
まず、市場の参入障壁を築いて、IBMの参入を阻止するために何ができるかを考えます。しかし、IBMには無限とも言える巨大な経営資源を持っている上に、この業界に政府の規制も存在しないことから、IBMの参入を阻止するための策を講じることは不可能に近いと言えます。
次に、現在のシェアをどうやって死守するかを考えます。新規の顧客を獲得するコストよりも、既存の顧客を維持するコストの方がずっと安いので、顧客維持のために私は3つの策をくじたいと思います。第一に、顧客にとってのスイッチング・コストを高くすることによって、顧客がクライアントからIBMに乗り換えにくくなるような状況を作ります。
ー具体的な例を挙げて下さい。
そうですね。私はこの業界について詳しくないので、他の業界における例を挙げさせていただきます。例えば、AOLは、世間から「粘着質」とまで称されるサービスを提供することによって、顧客の解約数を最小限に抑えています。AOLの顧客は、eメールアドレスや個人アドレス帳をAOL独自のウェブサイト情報や、その他の付随的なサービスにアクセスが可能です。したがって、AOLの顧客が他のプロバイダーに乗り換えようとすると、非常に手間がかかることになります。
ー良い例ですね。2番目の策はどうでしょうか。
顧客の流出を防ぐために、顧客の声にもっと耳を傾けて、彼らにとって何が重要なのかをよく理解します。プロモーション活動にもっと力を入れたり、顧客ロイヤルティ・プログラムを開発したりすることによって、顧客がクライアントにとって非常に大切で、特別な存在であると感じさせます。これは、どんな人でも自分が大事にされることを好むからです。
第3の策としては、できるだけ長期契約を結んで顧客を囲い込むことに全力を注ぎます。これを成功させるために、顧客との契約延長に成功した営業マンには特別ボーナスを与えるなどのインセンティブ制度を導入することを検討します。
ー続けて下さい。
次に、新規顧客を獲得する方法を考えます。具体的には、マーケティング・キャンペーンの展開・広告の掲載、企業展示会への参加、公共機関との長期契約締結に向けたロビー活動などを行います。また、競合他社の優秀な営業スタッフを自社に引き抜いて、顧客を奪うことを考えます。先程の話では、1社か2社の顧客のみと独占的に取引を行っている小規模企業が存在するとのことでしたが、彼らに会社を売却する意思があるかどうかを調べます。
ーIBMが自社の事業領域に参入しようとしている矢先に、多額の資金を使って買収を行うと言う案は、リスクが高いと思いませんか?小規模企業の顧客がIBMに乗り換えないと言う保証はあるのですか?
もちろん、そのよう保証はありません、しかし、IBMであると言うことは、いってみれば諸刃の剣のようなものです。IBMは巨大企業であり、その経営資源も莫大で、通常の企業にはできないようなことができる企業です。しかしその一方で、巨大企業であるが故に、思わぬ落とし穴に陥る危険も大きいと言えます。顧客に提供する教育プログラムの内容そのものは、クライアントとIBMでそれほど違いがないと考えても差し支えないでしょうか?私が思うに、クライアントサービスの質です。クライアントは、新しいビジネスを追求するとともに、現在の顧客に提供する教育プログラムの内容そのものは、クライアントとIBMでそれほど違いがないと考えても差し支えないでしょうか?私が思うに、クライアントが他の企業と差別化している点があるとすれば、それは人材と顧客サービスの質です。クライアントは、新しいビジネスを追求するとともに、現在の顧客をつなぎ止めるためにはどんなことでも行う覚悟があります。会社の規模が大きいことが、必ずしも常に有利であるとは限りません。
ー仮に、IBMが市場に参入した後で、クライアントと同程度の質のサービスをクライアントよりもずっと安い値段で顧客に打ち出してきたら、あなたはどうしますか?あなたもIBMと同様に値下げを行いますか?
いいえ。私はIBMと価格競争を繰り広げるつもりはありません。価格競争では、IBMに勝てる見込みはありません。クライアントは、質の高いサービスを、競合力のある値段で顧客に提供していると私は信じています。顧客がクライアントのサービスを本当に気に入っているのであれば、料金が安いからと言う理由だけでIBMに乗り換えるとは思いません。これは、新しい冷蔵庫を買う際に、一番安い値段で販売している店を探し回ることとは全く異なるものです。クライアントが取り組んでいるのはサービス業であり、質の高いサービスをk客に提供することが全てです。しかし、だからいって絶対に値引きを行わないと言うことではなく、例えば長期契約を結ぶ顧客に対しては割引価格でサービスを提供するなど、柔軟な対応をするつもりです。
ーあなたの言っていることは大筋で同意します。そろそろ、あなたの提案をまとめて下さい。
クライアントがとるべき戦略は、大きく3つに分類できます。1つ目は、市場の参入障壁を築いて、IBMの参入を事前に阻止することです。ただし、これは現実的にはかなり難しいと思われます。2つ目は、現在のシェアを死守するために、既存顧客の維持に最大限努めることです。具体的には、顧客にとってのスイッチングコストを高めることや、顧客ロイヤルティプログラム等のプロモーション活動、長期契約による顧客の囲いこみと言った対策が考えられます。最後に、大規模なマーケティング・キャンペーンの展開や他社の買収を通じて、新規顧客の獲得にも努めます。
ーよろしいでしょう。
以上、回答例となります。
今回は、ケースのタイプ的には、競合の動きに対する対抗策シナリオでした。
それでは。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
引用・編集:『戦略コンサルティングファームの面接試験 難関突破のための傾向と対策』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コメント