【結論】新規参入分野の選択についての回答例がわかる。
ケース例題5:われわれのクライアントは、米国内で産業用の洗浄溶剤や殺菌剤を製造している化学品メーカーである。ここ最近、クライアントの売上高は減少傾向にあるが、その主な原因は、政府当局による新しいガイドラインの導入である。クライアントは、ガイドラインに合わない古い製品を米国よりも政府の規制が緩やかな国へ安価で投げ売りしたり、新しいガイドラインを満たす新積品を開発したりすることで、事業環境の変化に対応してきた。さらに、業界全体の売上高について調べた結果、過去における化学品業界の市場規模は年率3%という穏やかなペースで成長しており、今後5〜7年もこの傾向は変わらないことが予想されている。
このような厳しい状況に直面して、クライアントの経営陣は事業の多角化に乗り出すことを決心した。彼らは従来の化学品事業は維持したまま、これに加える形で長期間にわたり高い成長率が期待できる業界への進出を望んでいる。そいて、自分たちが、どの業界に進出すれば良いかというアドバイスを求めるために、われわれを雇うこととなった。
この問題では、新規参入先の候補となる具体的な業界名を列挙すうことをあなたに求めているのではないことに注意して欲しい。私があなたに望んでいるのは、クライアントがどの業界に多角化を図っていくかを決めるにあたって、どのようなプロセスを踏めば良いか、まあ、各プロセスでどのようなことを考慮しなければならないのかを示すことである。
【ケース回答例】
問題の内容を確認させて下さい。クライアントはあ売上低下に直面している米国の化学品メーカであり、従来の化学品事業に加えて、長期にわたり高い成長率が期待できる業界への事業多角化を望んでいるということですね。
ーその通りです。
そして、私に求められているのは、クライアントが最適な新規参入先を決めるにあたって、どのようなプロセスを踏み、各プロセスでどのようなことを考慮しなければならないかを示すことですね。
ーはい。
事業の多角化を図って売上高を伸ばすこと以外に、私が頭に入れておくべきクライアントの目的はありますか?
ーいいえ、ありません。
クライアントの言う、「高い成長率」とは、具体的にどの程度の数字を指しているのでしょうか?
ー年率10%以上の成長率です。
わかりました。私であれば、まずは少しで化学品事業と関連がありそうな業界を全て取り上げて、その中から昨年度の年間成長率実績と、今後1年間の予想成長率が10%未満の業界を切り捨てることから始めます。ちなみに、クライアントはどの程度のリスクまで受け入れる意思があるのでしょうか?
ー中程度のリスクです。
では、需要の浮き沈みが激しくて、リスクが高い業界でも切り捨てる必要があります。こうして、クライアントがのぞむ成長率とリスクの度合いを致す業界を絞り込んだ上で、クライアントがシナジー効果を発揮できるような業界を抽出します。
ーもう少し具体的に説明して下さい。
例えば、ターゲット顧客が、クライアントの現在の顧客層と重なるような業界です。仮に、クライアントが現在ペプシに対して洗浄溶剤を販売しているとすれば、アルミニウム業界に新規参入して、ペプシにアルミ缶を販売するといったことが可能でしょう。また、クライアントは歴史的にBtoBのビジネスを行なってきたので、個人消費社向けのBtoCビジネスは避けた方が無難です。さらに、顧客層のみならず、クライアントが現在活用している流通チャネルや販売網を共有できる業界がないか、も調べる必要があるでしょう。以上のプロセスを経て、新規参入先の候補となる業界を絞り込めたら、次はその業界における主要企業や、各社のマーケットシェア、参入障壁の有無について分析します。
ー良いでしょう。他には何かありますか?
新規参入を図る際にの参入方法を検討します。新規市場への参入方法には、主に3つの選択肢があります。具体的には、①自社で全てを構築する自力参入、②既存企業の買収による参入、③他社とのジョイント・ベンチャー設立、または戦略的提携による参入の3つです。このうち、どの参入方法を選ぶかは、業界の参入障壁や…
ーちょっと待って下さい。あなたは具体的にどのような参入障壁のことを考えているのですか?
例えば、政府による規制が挙げられます。もし、われわれは新しい事業を始めるにあたっって、政府当局の特認可が必要となるのであれば、特認可のしゅとだけで何年もかかることが考えられます。このような場合には、自社で全てを構築するよりも、既存企業の買収による参入方法を選択すべきでしょう。他の参入障壁の例としては、業界内の既存企業による対抗措置も挙げられます。例えば、業界内の2大企業がマーケットシェアのほとんどを握っていて、新規参入を測ろうとする企業に対しては強硬な対抗措置を講じて締め出そうとする習慣があれば、そのような行動習慣は市場の参入障壁となりえます。また、原材料を確保することが難しいと言うような場合にも、それが参入障壁となるでしょう。
ー良いでしょう。他には何を検討しますか?
新規参入先の候補となる業界の将来像を注意深く分析します。具体的には、年率10%以上の成長率を今後も持続する見込みはあるか?どれくらい期間にわたって高い成長率を期待できるか、業界内の企業の数は増える傾向にあるか、それとも減少する傾向にあるか、業界内でM&Aや事業再編が頻繁に行われているかといったことを1つ1つ調べつぶしていきます。また、業界の成長率が減速した場合の撤退方法についても、あらかじめ検討しておく必要があるでしょう。
ーわかりました。あなたの答えを簡潔にまとめて下さい。
まずは、少しでも化学品事業と関連がありそうな業界を全て取り上げて、その中からクライアントが求める条件を満たす業界、さらに、クライアントの現有資源とシナジー効果を発揮できる業界を絞り込んでいきます。次に、業界内の主要企業や競合状況、参入障壁の有無など市場の状況について分析した上で、どのような参入方法を選択することが最善策であるかを決定します。
以上、回答例となります。
今回は、ケースのタイプ的には、新規市場シナリオ、ファクター問題でした。
それでは。
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引用・編集:『戦略コンサルティングファームの面接試験 難関突破のための傾向と対策』
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