【結論】プレミアムアイスクリーム・メーカーの売上増加策についての回答例がわかる。
ケース例題3:カウ・ブラザーズ社は、プレミアムアイスクリーム、低脂肪アイス、低脂肪ヨーグルト、シャーベットの製造・販売会社である。彼らの製品はどれも高品質であり、原料は天然素材のみを使っている。カウ・ブラザーズの製品は、スーパーマーケット、食料品店、コンビニエンスストア、フランチャイズストア、レストランなどを通して米国全土で販売されている。
カウ・ブラザーズのプレミアムアイスクリームには30種類の味があり、500ml容器入りで販売される他、1本単位のアイスとしても売られている。
カウ・ブラザーズは強いブランド力を誇っている。昨年度は「カウを食べよう」キャンペーンを展開し、結果的に大成功を収めた。昨年度の売上高は200百万ドルであり、このうち177百万ドルはスーパーマーケットと食料品店での販売となっている。業界内では、ハーゲンダッツ、ベン&ジェリーに次ぐ3番手に位置しており、これらのトップ3のメーカーがシェアの62%を占めている。
しかし、カウ・ブラザーズの店長であるウィンストン・カウは、現状に満足していない。彼は、今年度の売上高を250百万ドルにまで伸ばしたいと思っている。あなたなら、どのような方法でこの目標を達成しようとするだろうか?
【ケース回答例】
問題の内容を確認させて下さい。カウ・ブラザーズは、プレミアムアイスクリーム市場で3番手に位置するメーカーであり、売上高を200百万ドルから250百万ドルに伸ばしたいと思っているということですね。200百万ドルから250百万ドルに伸ばしたいということは、25%の増加率に相当しますが、カウ・ブラザーズの昨年度の売上高は、その前年度に比べて何%増加したのでしょうか?
ー昨年度の売上高成長率は10%でした。
その10%の伸びは、主に、「カウを食べよう」キャンペーンによってもたらされたものでしょうか?
ーその通りです。
売上高を伸ばすこと以外に、私が頭に入れておくべき目的はありますか?
ーいいえ、ありません。
昨年度のプレミアムアイスクリーム市場全体の成長率は、どれくらいでしたでしょうか?
ー12%です。
ハーゲンダッツとベン&ジェリーの売上高成長率も12%程度だったのでしょうか?
ーいいえ。ベン&ジュリーの成長率は20%。ハーゲンダッツの成長率は12%以下でした。
ということであれば、われわれはまず、ベン&ジェリーがどのようにして売上高を大きく伸ばしたかを調べた上で、カウ・ブラザーズ及びハーゲンダッツが昨年度に行ったことと比較して、何がうまくいった原因なのかを分析する必要があります。
ーおしゃる通りですね、その他はどうでしょう?
(回答者が以下のディシジョン・ツリーを書く)
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売上増加のオプション
- 販売量を増やす
- 顧客一人当たりの売上単価を増やす
- 値上げを行う
1. 販売量を増やす
- 顧客層の拡大
- 流通チャネルの拡大
- マーケティング・キャンペーンの強化
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売上高を伸ばすためには、大きく3つの方法があります。3つの方法とは、①販売量を増やす、②購買1回あたりの顧客単価を増加させる、③販売価格を値上げする、というものです。まず、価格に関する質問なのですが、カウ・ブラザーズが販売する製品の価格は、競合他社の製品と比べて、どのような水準に設定されてますか?
ーカウの製品は、競合他社の製品とほぼ同じ価格帯で販売されております。
ということであれば、販売価格を値上げすることは難しいですね。現在、カウ・ブラザーズの製品は500ml入りの容器で販売されているとのことですが、例えば、容量を倍にして1リットルでも販売するという考えはどうでしょうか?これによって、購買あたりの顧客単価が増えるという効果が期待できます。
ーそれも一つの考えですね。
3つ目の方法として考えられるのは、販売量を増加させるというものですが、これは企業の成長戦略と密接に関わる項目です。成長戦略には主に5つの選択肢があり、①流通チャネルの拡大、②商品ラインの拡大、③大規模なマーケティング・キャンペーンの実施、④商品の多角化、⑤他社の買収、が各選択肢として挙げられます。これから、それぞれの選択肢について、検討した上で、どのような手段が効果的か検討したいと思います。
まず、流通チャネルの拡大について考えます。カウ・ブラザーズの製品は、既に主要な流通チャネルを全て網羅しているかのように思われますが、彼らの販売力が相対的に弱い地域が必ずあるはずです。地域別の販売データを分析して、このような地域を探り出した上で、カウ製品の販売拠点を増やすことができないかどうかを検討します。
次に、商品ラインの拡大について考えます。カウ・ブラザーズの商品には30種類の味があるということですが、実際にスーパーマーケットやフランチャイズストアの店頭に並ぶ品目数はいくつくらいでしょうか?
ースーパーマーケットや食料品店では5種類程度、フランチャイズストアでは15種類程度dです。
現在の品目数でも、既に店頭で並べられる以上の数となってますから、これ以上の商品の種類を増やすことは得策ではないですね。となれば、味覚の種類ではなく、提供するサイズの種類を増やすことを考えた方が良いでしょう。
マーケティング・キャンペーンの展開については、昨年度の「カウを食べよう」キャンペーンが大成功を収めた経験を踏まえて、今年度も引き続き新しいキャンペーンを打ち出していくべきだと考えますが、十分な予算が割り当てられているか否かをチェックする必要があります。
次のアイデアは少々思い切った行動かもしれませんが、商品の多角化を図るというものです。カウ・ブラザーズのブランドは広く認知されており、その品質の高さにも定評があるとのことなので、これを最大限に生かします。私は大学のマーケティングの講義で、ハーバード大学のテッド・レビット教授が執筆した「近視眼的マーケティング」という論文を読みました。この中で、レビット教授は、自動車の発明とともに製品の需要が激減し、結果的には消滅した馬車メーカの例に触れて、「もし、この馬車メーカーが自社のセグメントを馬車そのものとして考えるのではなく、運送手段全体として捉えていれば、今日まで生き延びることができたであろう」と述べています。これと同様に、カウ・ブラザーズも、自社の事業領域をプレミアムアイスクリームのみに限定するのではなく、乳製品全般やグルメ食品全般と考えれば、そのブランド力をより活かすことができると思います。
例えば、グルメ向けのクリームチーズを販売することを考えてみてはどうでしょうか。クリームチーズであれば、カウ・ブラザーズが現在活用している流通チャネルと同じ販路を通じて販売することができるだけでなく、販路を新たにベーグルショップなどにも広げて、クリームチーズと棒アイスの両方を販売するということも可能です。
ー検討すべきアイデアですね。
最後に、他社を買収するという案ですが、買収を行った結果、借入金の負担が過大になることはないか、つまり、自社の財務状況に比べて無理な資本調達にならないかを事前に調べておく必要があります。事前調査の結果、買収資金の調達に無理がないという判断になれば、自社よりも規模が小さくて、地場中心、特に、カウの販売力やブランド力が比較的弱い地域の地場企業を買収のターゲットとしてリサーチするのが良いでしょう。
ー良いでしょう。あなたの提案をまとめて下さい。
まず、従来の500ml容器に加えて、1リットルっ容器入りの商品も販売することで、顧客単価の増加を狙います。次に、昨年度の「カウを食べよう」キャンペーンに引き続き、今年度も新しマーケティング・キャンペーンを展開し、十分な予算を確保できるのであれば、その規模をさらに拡大させること考えます。また、プレミアムアイスクリーム以外の乳製品、例えば、グルメ向けのクリームチーズなどの商品の多角化を行い、既存のブランド力と流通チャネルを最大限に活かすことを考えます。最後にカウの販売力が比較的に弱い地域の地場企業を買収して、彼らの販売力を活用することが可能かどうかを検討します。
以上、回答例となります。
今回は、ケースのタイプ的には、売上増加シナリオ、成長戦略シナリオでした。
それでは。
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引用・編集:『戦略コンサルティングファームの面接試験 難関突破のための傾向と対策』
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