【結論】機内販売の増加策について回答例がわかる。
ケース例題30:ノースアメリカン航空(NAA)は、機内販売の伸ばすための策として、世界的なコーヒー会社であるジャヴァムース社(Jave Moose)提携関係を結び、ジャヴァムースが製造する様々な種類のスペシャルブランドコーヒーを販売することを検討している。この提携案は、NAAにとって得策と言えるだろうか?
【ケース回答例】
問題の内容を確認させてください。ノースアメリカン航空(NAA)が機内販売を伸ばすために、ジャヴァムース社と提携してコーヒーを販売することを検討しており、我々は、それがNAAにとって得策なのかどうかを判断することを求められていると言う事ですね?
ーその通りです。
利益を得ること以外に、私が頭に入れておかなければならないNAAの目的はありますか?
ージャヴァムースと共同でマーケティングキャンペーンを打ち出すと言う意向もありますが、とりあえずここでは利益の面のみを考えてください。
いくつか情報得る必要があります。具体的には、航空日のルート、NAA現在機内販売をしている商品、NAAの主要顧客、達成したい売上高や、利益の目標値、新たに販売予定しているコーヒーの特徴などが挙げられます。
ー分りました。どの情報が欲しいですか?
まずは、航空便のルートに関する情報です、NAAは、現在どのようなルートの便を飛ばしているのですか?また、最大のルートの飛行時間はどれくらいですか?
ー全体の80%の便が、飛行時間は2時間以内であり、ニューヨーク、ボストン、ワシントンDC、フィラデルフィアといった都市を結んでいます。最近、NAAは米国を横断するニューヨーク⇔ロサンゼルス便と、ニューヨーク⇔サンフランシスコ便の新ルートを新たに加え、これが残りの20%を占めています。これらはいずれも直行便であり、飛行時間は約6時間です。
NAAは、1日に合計何便を飛ばしているんでしょうか?
ー50便です。
と言う事は、40便が飛行時間2時間以内の短距離便であり、10便が約6時間の長距離便ですね?
ーおっしゃる通りです。
次に知りたいのは、NAAが現在地の販売をしている商品に関する情報です。現在、機内で無料提供されているもの、有料で販売されているものには、どのようなものがありますか?そして、有料で販売されている商品の利益率はどれくらいでしょうか?
ーソフトドリンク、ミネラルウォーター、紅茶、レギュラーコーヒーは、飛行時間やルートに関係なく、すべての国で無料提供されています。早朝便では、ベーグルや朝食セットが有料で販売され、長距離便では、ピーナッツ、ポテトチップ、フルーツが無料で提供されます。また、すべての便で、ビール、ワイン、シャンパンが有料で販売されています。有料で販売されている商品の利益率は、平均で売上高の3分の1 (33.3%)です。
分りました。次に必要となるのは、NAAの機体の種類や、主な顧客層、乗客率、1便あたりの平均機内販売高に関する情報です。もっと具体的に言えば、使用している機体は全て同じ大きさか、主にどのような顧客を乗っているか、各便でどれくらいの座席が埋まっているか、機内販売をしているのは、どのような顧客が、機内販売の売り上げが集中する便や時間帯といったものが存在するかといった点について、知りたいと思います。
ー分りました。すべて、良い質問ですね。NAAが使用している機体がすべて同じ大きさで、乗客定員は200人です。主な顧客層はビジネス利用客であり、日帰り出張に使われることが通常です。また、各便の平均乗客率は、95%です。今し方述べた通り、乗客の大半はビジネス利用客なので、機内販売を利用しているのも、これらの客層となります。1便当たりの平均機内販売高は、フライトの時間帯と飛行時間の長さによって異なります。具体的には、午前発の短距離便における1便あたりの平均売上高は50ドル、午前発の長距離便で100ドル、午後発の短距離便は150ドル、午後発の長距離便では200ドルとなっています。
非常に役立つ情報です。機内販売利用客一人当たりの平均購入額を教えていただけますか?
ー5ドルです。
1日全体の50便のうち、午前発と午後発の便数はそれぞれいくつでしょうか?また、午前発と午後発のそれぞれにおける、短距離便と長距離便の割合はどのようになっているのでしょうか?
ー午前便と午後便の数は同じ、つまり、どちらも25便ずつ飛んでいます。また、午前便と午後便のいずれも、80%が短距離便です。
分りました。ここまでの情報を表にしてまとめたいと思います。
この表から、NAAの機内販売の売上高は1日あたり5500ドルであり、利益が売上高の3分の1なので、コストが3666ドル、利益が1833ドルと言う計算になります。
ーあなたは、私が既に知っている情報に時間をかけすぎている感があります。時間が限られているので、どんどん先に進めましょう。
NAA利用客のうち、スペシャルブレンドコーヒーを飲む人の割合は、どれぐらいでしょうか?
ーそれは、分かりません。
各便の平均乗客率は95%なので、全体の乗客数は1便あたり190人です。まずは、午前発の短距離便から調べて行きます。現在この便は1日20便が飛んでおり、各便でコーヒー以外の有料飲料が10杯分販売されています。ここでは、10杯の飲み物がそれぞれ異なる乗客によって購入されており、残り180人のうち10%の人のみがジャヴァムースのスペシャルブレンドコーヒーを購入すると仮定します。この過程は、いくつかの根拠に基づいています。
第一に、午前便に乗るビジネス客は、コーヒーを飲んで目を覚ますよりも、できる限り機内で一眠りしたいと思う人の方が多いのではないかと言うことです。第二に、乗客のうちかなりの人は、機内で無料提供されレギュラーコーヒーで十分満足するだろうと言うことです。第3に、機内ではなく、空港で搭乗待っている間にジャヴァムースのコーヒーを購入している客も一部いると言うことです。これらの根拠により、180人の10%に相当する18人の乗客が、午前発の短距離日における潜在的な顧客であるとの仮定が成り立ちます。
午後発の短距離便になると、ジャヴァムースコーヒーを購入する人の数は午前よりももっと少なくなり、コーヒー以外の有料飲料を購入する30人を除いた残り乗客の5%程度になると推測します。これは、次の2つの根拠に基づいています。第一に、コーヒーの売り上げは1日の時間が進むにつれて減少していくと言う一般的な傾向があることです。これは、日中になるとミネラルウォーターや炭酸飲料の方を好んで飲む人が増えることや、午前中ほど眠気を覚ますためにコーヒーを飲む必要性がなくなるためです。第二に、コーヒーがあるのはやはり朝食であり、昼食、おやつ、夕食時にコーヒーを合わせて飲む人の割合は減少すると言うことです。したがって、午後発の短距離便における潜在的な顧客数は、(190 − 30)× 5% = 8人となります。
ー良い感じですね。続けてください。
午前発の長距離便では、各便でコーヒー以外の有料飲料が20杯分販売されており、この人たちはコーヒーを購入しないと仮定すると、残りの乗客数は170人となります。長距離便は短距離日に比べて飛行時間が3倍以上となりますが、ジャヴァムースのコーヒーを購入する人の割合は30%ではなく、短距離便と同じ10%にとどまると仮定します。これは午前発の短距離便とほぼ同じ理屈に基づくものです。まず、飛行時間が長ければ、機内で眠りたい客はそれだけ長時間眠るでしょうし、無料のレギュラーコーヒーで満足する人が多いと言うことも変わりません。また、コーヒーを何杯も飲む人にとっては、飛行時間が長ければ長いほど、無料のコーヒーの方が、ありがたみが増すことになります。したがって、午前発の長距離便における潜在的な顧客数は、170 × 10% = 17人となります。
ー時間が押してきたので、ペースアップをお願いします。
分りました。残っているのは、午後発の長距離便です。このフライトでは、各便でコーヒー以外の飲み物が40杯分販売されており、残りの乗客数は150人となります。ここでも、午後発の短距離と長距離便で同じ理屈が当てはまる事は変わらず、ジャヴァムースコーヒーを購入する人の割合は、残りの乗客の5%であると推測します。したがって、午後発の長距離便における潜在的な顧客数は、150 × 5% = 7.5人となり、保守的に見て7人とします。
以上をまとめると、次の表が作成されます。
この表から、ジャヴァムースがのコーヒーが1日に販売される数量は、640杯になることがわかります。
ーそれで、あなたの結論はどうなるのですか?
機内でジャヴァムースのコーヒーを販売すると言う案には、いくつかの懸念事項があります。第一に、ジャヴァムースがNAAとの提携を拒む可能性があると言うことです。この理由は、ジャヴァムースが空港内の売店での販売とカニバリゼーションを起こすためであり、空港内でジャヴァムースのコーヒーを買う顧客は、同時に食べ物も必ず買うであろうことを考えると、この問題はさらに深刻なものとなります。第2の問題点は、機内でジャヴァムースのコーヒを販売するに際しての特別な準備が必要となり、これはNAAとジャヴァムースの両者にとってコスト負担が発生すると言うことです。特に、何種類ものスペシャルブレンドコーヒーを販売するのであれば、コスト負担の金額はさらに大きくなります。第3の問題点は、機内で飲食物を保管する場所が既に限られている中で、新しい乗り物のためにスペースを確保するのは困難であると言う点であり、第4の問題点は、機内でコーヒーを支給することによって、顧客に安っぽいイメージを植え付けてしまい、世界的な高級コーヒー会社としてのジャヴァムースのブランドを傷つけてしまうリスクがあると言う点です。
ーあなたの意見は、主にジャヴァムースの視点から述べられており、我々のクライアントであるNAAにとっての視点が欠けているように思われます。結論として、NAAはジャヴァムースに機内販売を目的とする提携を持ちかけるべきなのでしょうか?
私としては、午前発の短距離と長距離便の一部に限定して、試験的な販売を行うことを検討します。そして、より多くの顧客にジャヴァムースのコーヒーを試してもらうために、レギュラーコーヒーの支給を一旦止めて、ジャヴァムースのコーヒーを無料で提供します。もしくは、単に無料でコーヒーを支給する事は全面的に廃止して、ジャヴァムースのコーヒーのみを有料で販売すると言うことも考えられますが、これは乗客からの反発が大きく、現実的じゃないでしょう。特別な準備が必要であると言う点については、ジャヴァムースの商品の中でも特に人気が高い1つか2つの種類に絞るとともに、ジャヴァムースにあらかじめ焙煎やドリップまで行ってもらうことによって、機内のフライトアテンダントの作業が最小限で済むようにします。先ほど作成した表から、仮にNAAがジャヴァムースノーコーヒーを1杯3ドルで販売した場合、1日あたりの売上高は3ドル× 640杯= 1920ドルになりますが、利益の大部分はジャヴァムースが取り分を要求してくると思われるので、NAAの利益はかなり小さな金額になることが予想されます。
これら全てを総合的に判断すれば、私の結論はNAAこの案を実行するべきではないと言うことになります。
ーあなたは、競合他社がどのようなことを行っているのかについて検討しましたか?例えば、他の航空会社がジャヴァムースいやスターバックスのコーヒーを機内で提供しているかどうかと言う点については考えなかったんでしょうか?
その点については、後で触れようと思っていましたが、時間が足りなかったと言うのが正直なところです。
ー機内でジャヴァムースのコーヒーを販売すれば、NAAは利益を得るだけでなく、無料で支給するコーヒーが減るので、同時にコスト削減効果も働きます。このような、プラスの効果を生むカニバリゼーションについては考えなかったんですか?
それは思いつきませんでしたが、確かに重要なポイントです。
ージャヴァムースのコーヒーを機内で提供するようになれば、他の航空会社からNAAの便に乗り換える顧客が増えるかもしれないと言う点については、考えませんでしたか?例えば、乗客率が1%上がれば、コーヒーの販売よりも、ずっと大きな利益が得られることになります。
その点も思いつきませんでした。
ージャヴァムースのコーヒーを有料ではなく、全て無料で提供すると言う選択肢については、考えなかったのですか?
時間が限られていたので。
ーNAAが機内でジャヴァムースのコーヒーを提供するようになった場合、他の航空会社がどんな反応示すかについては考えませんでしたか?
確かに、そのような分析を行うことも必要かもしれません。
ー私にはっきりと分かった事は、あなたがビジネス目的で飛行機を利用する顧客の特性について、よくわかっていないと言うことです。さらに言うと、あなたがコンサルタントになった後でも、この顧客層について深く理解できるようになるか疑問です。ビジネス利用客は、全くと言って良いほど、価格のことを気にしません。なぜなら、彼らは極めて忙しく、5ドル以下の出費についてとやかく悩むような人たちでは無い上に、実際に料金を支払っているのは彼ら自身ではなく、会社であることが一般的だからです。したがって、これらの顧客は、たとえ有料であっても、まず間違いなく、レギュラーコーヒーよりジャヴァムースの方を選ぶだろうというのが、私の考えです。
ー次に、目を覚ますためにコーヒーを購入人の割合は、あなたが述べた数字より実際はもっと高いと思います。事実、私が飛行機を乗る際には、寝ている人も確かにますが、コーヒーを飲みながら仕事をしている人の姿もかなり見られます。
ーこれほど多くの点について見落としているのに、どうやって、あなたを次の面接に呼べと言うのでしょうか?
この問題では、利益の面だけに絞って考えると言うことでした。時間的な制限がある中で、私はこのあの経済についてきちんと分析を行い、それなりの回答したと思っています。また、適切な質問を数多く問いかけたと自分では思っているのですが、これは思い違いでしょうか?
ーいいえ。あなたの言う通り、良い質問はたくさんありました。
私の計算力が高いと言うことも証明できたと思っています。ほとんどの計算を頭の中で暗算しましたし、わかりやすい表も作成しました。また、自分の考えが相手にも伝わるように、計算過程をきちんとしながら議論を進めました。私は、自分の回答に自信を持っています。確かに、考慮すべき点が他にもあったかもしれませんが、時間的な制約を考えれば、優先順位をつけざるをえませんでした。もし時間的に許されるのであれば、ジャヴァムースのコーヒーを無料で提供することによって乗客率が1%上昇した場合の経済効果を計算しますし、ジャヴァムースと共同マーケティングを行った場合の効果や、ジャヴァムースの代わりにスターバックスのコーヒーを提供したらどうなるかといった点についても検討します。また、他の航空会社がどのようなことを行っているかについての競合分析を行うことも可能です。
ーそこまでする必要はありません。正直なところ申し上げると、あなたの回答は非常に良かったと思います。私があえて高圧的な態度とったのは、あなたが他人からの批判に対してどのように対処するかをみたかったからですが、ここでもあなたの対応は適切だったと思います。
以上、回答例になります。
今回は、新商品開発シナリオ、売り上げ増加シナリオ(ただし、どちらのシナリオもぴったりとは当てはまらない)でした。
それでは。
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引用・編集:『戦略コンサルティングファームの面接試験 難関突破のための傾向と対策』
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