【結論】紙おむつ事業への新規参入についての回答例がわかる。
ケース例題27:デュポン社は、紙おむつに最適な、軽量で吸水性に優れた新素材を開発した。デュポンはこの新素材を活かして、どのような戦略をとるべきだと思うか?
【ケース回答例】
問題の内容を確認させてください。デュポンが紙おむつに最適な新素材を開発し、この素材を生かすためには、どのような戦略をとれば良いか知りたがっていると言う事ですね?
ーはい。
デュポンの目的の1つは、この新素材をどう活用するかを決めることですが、これ以外にも、私が頭に入れておくべき彼らの目的はありますか?
ーはい。十分な利益を得ることです。しかし、まずその前に、あなたに米国の紙おむつの市場規模を推定してほしいと思います。
分りました。いくつかの過程をおいて、市場規模を推定します。まず、米国の総人口は2億8000万人、平均寿命は80歳として、どの年齢をとっても同じ数の人間がいると仮定します。すると、各年代の人口数は2億8000万人÷ 80年= 3,500,000人になります。子供が紙おむつを利用するのは、生まれた直後から3歳になるまでの3年間であると仮定すると、その数は3,500,000人× 3年 = 10500,000人ですが、端数は切り捨てて10,000,000人とします。このうち、紙おむつを利用する子供の割合が80%と仮定すると、その数は8,000,000人になり、それぞれの子供が1日あたり平均5枚の紙おむつを消費すると仮定すれば、毎日40,000,000枚の上物が消費されます。これに365日をかければ、年間の消費枚数は約146億枚となり、紙おむつ1枚の単価を1ドルと仮定すれば、金額ベースでとらえた米国の紙おむつ市場規模は年間146億ドルとなります。
ーこれで市場規模は推定できましたね。次はどうしますか?
紙おむつ市場の分析を行います。具体的には、業界内の主要企業の顔ぶれや、各社のマーケットシェア、各商品の価格水準の違いなどを調べます。おそらくP&Gが大きなシェアを握っており、P&Gの他にも多くの人気ブランドがひしめいている状態でしょう。競争が激しい市場である事は事実ですが、クライアントの新規参入を阻むような上行が存在しないと思います。
ーと言う事は、デュポンは紙おむつ事業に参入すべきであるというのが、あなたの意見でしょうか?
はい。しかし、ただ単に参入するのではなく、どの分野に絞って参入するかを検討する必要があります。クライアントの目的の1つは十分な利益を上げることであり、紙おむつ使用でメジャープレイヤーになることではありません。したがって、クライアントが市場に参入する方法には、いくつかの選択肢があることになります。私はこれらの方法列挙して、それぞれの利点と欠点を分析していきたいと思います。
新規市場への参入方法としては、①自社で全てを構築する自社参入、②他社とのジョイントベンチャー設立(J/V)、または戦略的提携による参入、③既存企業の買収による参入、④他社に販売ライセンスを有償で与えて、自社はOEM生産を行う形の参入といった4つの方法を考えられます。
まずは、自力参入の利点と欠点を考えます。デュポンは一般的に強いブランド力ありますが、紙おむつ事業ではそれほど認知度が高くありません。この参入方法では、全く無の状態から製造工場を建設し、新しい経営陣や営業スタッフを雇い、流通チャネルを構築する必要があります。実行不可能と言うわけではありませんが、非常に時間とコストがかかる方法での事実です。
次に、他社とのJ/V設立、または戦略的提携による参入方法ですが、この方法の利点は、J/Vのパートナーや戦略的提携を結ぶ相手が既に持っているブランド力、経営陣、営業スタッフ、流通チャネルといった資源を利用できると言うことです。一方で、この方法の欠点は、パートナーとの交渉結果如何では、おいしいところ全部相手にとられて、自社にとってあまりうまみがない形となってしまう可能性があると言うことです。相手との交渉うまく運ばないと、我々はパートナーのために製品を製造して提供するだけの、単なるメーカー機能の役割のみにとどまってしまうかもしれません。
第3の選択肢として挙げられるのは、既存企業の買収による参入です。この方法の利点は、J/V設立または戦略的提携による参入とほぼ共通しています。ただ、この方法取る場合には、我々が製品の製造と販売の両方を行うか、それとも製造のみ行うかを事前に十分に検討しておく必要があります。
第4の選択肢は、クライアントが製品のOEM生産を行い、他社に販売ライセンスを有償で与える方法です。もしクライアントの製品が他社よりも優れているのであれば、複数の企業に対してライセンス権獲得のための入札を発表して、各社に競わせると言う手が考えられます。
ー良いでしょう。あなたなら、どの選択肢を選びますか?
手元の情報だけから判断すれば、最後の選択肢、つまり、クライアント自身は製品のOEM生産を行い、他社に販売ライセンスを有償で供与すると言う方法を選びます。デュポンは、あくまで自社が最も得意とする製造分野に専念する形が良いというのが、私の考えです。
また、他社を使ってテストマーケティングを行い、自社の製品に対する需要がどれくらいあるのかと言うことや、販売価格が妥当かどうかを事前に確認することを検討します。
以上、回答例になります。
今回は、マーケット・サイジング、新規市場参入シナリオ、コスト・ベネフィット分析でした。
それでは。
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引用・編集:『戦略コンサルティングファームの面接試験 難関突破のための傾向と対策』
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