【戦略コンサル対策】ケース例題26:アンハイザー・ブッシュ(バドワイザー)_ビール容器の素材変更

【結論】ビール容器の素材変更についての回答例がわかる。

ケース例題26:我々のクライアントはアンハイザー・ブッシュ社であり、その主要商品はバドワイザーである。彼らは、バドワイザーの容器をガラス瓶からプラスチックボトルに変えるべきかどうかについて、我々のアドバイスを求めている。容器を変更することの利点と欠点は何であろうか?また、米国のビール市場規模はどのくらいかを推定してほしい(米国の総人口2億8000万人と仮定すること)。

 

【ケース回答例

 クライアントの最大の目的は何ですか?

ー利益とマーケットシェアを増加させることです。

 バドワイザーの現在のシェアはどれくらいですか?

ーアンハイザー・ブッシュが製造している約30種類のビールすべてを合わせると、国内46%のシェアを誇っています。そのうち、バドワイザーは20%のシェアを占めています。

 その20%と言うのは46%のうち20%ですか?それとも、全市場の20%のことですか?

ー全市場の20%です。

 まずは、米国のビール市場の規模を推定します。全人口の年齢層1歳から80歳までと仮定した上で、これを20歳おきの4つの世代のグループに細分化して市場規模を考えていきたいと思います。米国の総人口は2億8000万人で、各世代の人こそ同じだと仮定すると、各世代の人口数は70,000,000になります。次に、各世代のグループの特徴もう考えると、次のようになります。

  • 第一世代、つまり1歳から20歳までのグループは全くビールを飲まないと考えます。
  • 21から40歳までの第二世代の人が、おそらく最もビールを飲むグループだと考えられます。このグループのうち70%の人がビールを飲み、平均で週あたり5本、年間では約250本(1年間= 52週≒50週)のビールを飲むと仮定します。すると、70,000,000 × 70% = 49,000,000人≒約50,000,000人の人が、一人当たり年間250本のビールを飲むことになるので、この世代の年間ビール消費本数は、50 × 250 = 125億本となります。
  • 41から60歳までの第3世代のグループに関しては、50%の人がビールを飲み、平均で週あたり3本、年間で150本を飲むと仮定すると、この世代の年間ビール消費本数は、35 × 150 = 52億5000万本≒約53億本となります。
  • 61から80歳までの第4世代は、20%の人しかビールを飲まず、年間消費本数は、週あたり2本、年間100本と仮定するとこの世代の年間ビール消費本数は、14 × 100 = 14億本となります。

以上まとめると、表が作成されます

 この上から、米国のビール市場規模は、年間約200億本と推定されますが、これには一般家庭で消費されるものだけでなく、バーやレストランで飲まれるビールも含まれています。

 ここで1つ質問があるんですが、市場規模は金額ベースと商品本数ベースのどちらで計算した方が良いのでしょうか?

 

ー消費本数ベースで結構です。

 

 では、年間のビール消費本数を約200億本とし、館麦酒と瓶ビールの消費割合は50%:50%で半々だと仮定すると、瓶ビールの年間消費本数は約100億本となります。バドワイザーのマーケットシェア20%なので、この問題の対象として考えるビール瓶の数は年間20億本となります。

 

 ー良いでしょう。では、残りの問題に移りましょう。

 

 私からいくつか質問があります。まず、プラスチックボトルの耐用年数は、ガラス瓶アルミニウム缶と変わりませんか?

 

ーはい、耐久性に差はありません。

 

 ビールを冷たく保つ性質の面では、プラスチックボトルはガラス瓶やアルミニウム缶と比較してどうでしょうか?

 

ーガラス瓶とは同じ位ですが、アルミニウム缶よりも長時間ビールの冷たさを保つことができます。

 

 プラスチックボトルにすることで、ビールの味覚への影響はありますか?

 

ーいいえ、ありません。

 

 競合他社の中で、プラスチックボトルに変えたところはありますか?

 

ーまだそのような会社は存在しないと考えてください。

 

 プラスチックボトルの重さは、ガラス瓶の2分の1位でしょうか?

 

ープラスチックボトルの重さは、ガラス瓶の7分の1になります。

 

 プラスチックボトルの方が軽いと言う事は、輸送コストの削減につながると思いますが、この点に関して何か情報ありますか?

 

ープラスチックボトルの輸送コストは、ガラス瓶の約2分の1になります。具体的には、ガラス瓶の輸送コストは1本あたり6セント、プラスチックボトル1本あたり3セントと考えてください。

 

 プラスチックボトルに変えるためには、製造設備を新しくする必要があるのではないでしょうか?

 

ー良い質問です。実際、多少の設備変更が必要となります。瓶詰めされるときにビールは熱く煮立っています。プラスチックボトルにする場合は、ビールを先に冷やしておかないと、ビールを詰める際の熱と圧力によって、ボトルが変形してしまう恐れがあります。また上蓋の形状もプラスチックボトルとガラス瓶では異なり、プラスチックボトルの場合には、ネジマキ状のキャップをする必要があります。

 

 設備変更にかかるコストはどれくらいですか?

 

ー約10,000,000ドルです。

 

 プラスチックボトルに変更することで、バドワイザーの販売数量増加すると見込まれているのでしょうか?

 

ーあなた自身はどう思いますか?

 

 ビールの愛好家は、瓶ビールに強い愛着を持っているのではないかと思います。そこで、まずは歴史を振り返って、ビール業界がアルミニウム缶を導入したときの背景を確認したいと思います。

 

ーそれは良い考えですね。しかし、私は今、それに関する情報を持ち合わせていません。

 

 分りました。まず、クライアントがガラス瓶を全てプラスチックバットに変えてしまうと、瓶ビールにこだわりがある中年世代の顧客層を失ってしまうのではないかと言うことが懸念されます。したがって、プラスチックボトルは、顧客側が持つ1つの選択肢に留めておきたいと思います。つまり、顧客はプラスチックボトルでもガラス瓶でも自分の好きな方を選んで購入できるようにします。また、最初から大々的にプラスチックボトルへの変更を行うのではなく、約1年半かけて全米の6大都市でテストマーケティングを行い、その結果を見た上で最終的な意思決定を判断します。

 プロモーション活動(広告宣伝活動)については、プラスチックボトルの炭酸飲料水を飲んで育った20代から30代の若年層を主なターゲットにするでしょう。さらに、炭酸飲料水の販売方法を真似て、通常サイズの12オンス・ボトル(約360ミリリットル)に加えて、20オンス(約600ミリリットル)のトールサイズ・ボトルもうパッケージ販売を行うことで、販売量を伸ばすことができると思います。プラスチックボトルの上蓋は2時間机上のキャップに変更しなければならないと言う事でしたが、キャップであれば、12オンス・ボトルでも20オンス・ボトルでも同じものを利用できるので、余計なコストはかからないと言う点もプラスです。

 また、プラスチックボトルの場合、スポーツ観戦での大きな販売需要があると思います。野球やサッカーなどの試合観戦中は、ガラス瓶よりプラスチックボトルで販売する方が安全です。同様の理由で、海岸やプールサイドでビールを飲む場合にも、プラスチックボトルが適しています。あとひとつ言い忘れていましたが、プラスチックボトルは飲料中や輸送中を問わず、割れにくいと言う利点もあります。

 

ー経済効果の面では、どうでしょうか?

 

 先ほど行った分析により、プラスチックボトルへの変更対象となるバドワイザーの本数は、年間20億本です。プラスチックボトルの輸送コストは外遊びに比べて1本あたり3セント安いので、年間3セント× 20億本= 60億セント= 60,000,000ドルの輸送コスト削減につながり、これは設備の変更に必要なコストの10,000,000ドルを大きく上回ります。輸送コストが安いことに加えて、プラスチックボトルは破損しにくく、これもコスト削減に寄与するので、経済効果の面から見ても、少なくとも全米6年でテストマーケティングを実施する事は合理的な判断だと思います。

 

ー良いでしょう。そろそろ、最後のまとめに入りましょう。ガラス瓶をプラスティックボトルに変更することの利点と欠点は何でしょうか?また、あなたならクライアントにどのようなアドバイスを与えますか?

 

 私であれば、プラスチックボトルへの変更いきなり本格的に導入するのではなく、まずはテストマーケティングを行うことをクライアントに勧めます。また、当面は、プラスチックボトルにするかガラス瓶にするかは顧客が好きな方を任意で選べるようにして、ガラス瓶を全てなくす事は決してしないようにアドバイスします。バドワイザーの瓶ビールには長年の歴史があり、ガラス瓶をなくす事は、顧客離れとマーケットシェアの低下につながりかねません。もし、プラスチックボトルへの全面的な変更を行いたいのであれば、バドワイザーよりもっと販売本数が少ない商品で試してみるのが良いでしょう。

 クライアントの目的や利益を増加させることなので、プラスチックボトルへの変更による利点を、コスト削減と売り上げ増加の2つの観点から分析したいと思います。まず、コスト削減の面では、プラスチックはガラスよりも原料コストが安いこと、プラスチックボトルの重量はガラス瓶の7分の1なので、輸送コストが削減される事、輸送中の破損が少ないこと、の3つが挙げられます。売り上げ増加の面については、通常サイズの商品に加えて、トールサイズ・ボトルを販売することによって売上高の増加に繋げます。また、プラスチックボトルの飲料水を飲んで育った21から40歳までの第二世代の顧客層を重点的に攻めて、効果的なマーケティング活動を行えば、さらなるシェアの増加が期待できます。

 一方で、プラスチックボトル導入の欠点として挙げられるのは、イメージの問題です。バドワイザーはキング・オブ・ビア(ビールの王様)としてのイメージが強く、プラスチックボトルはこのイメージにそぐわないと感じる人も出てくるでしょう。ただし、先に述べた通り、プラスチックボトルはあくまで顧客が選べる選択肢の1つとして提供する形をとれば、瓶ビールにこだわりを持つ伝統派の顧客を失うこともないでしょう。もう一つの欠点として考えられるのは、プラスチックボトルで販売することによって、特に若年層の顧客がまるで炭酸水を飲むのと同じ感覚でビールを大量に飲む可能性があると言うことです。この結果、飲酒運転による事故を増加させる恐れがあるので、この問題については細心の注意を払うことが必要だと思います。

 

ーよくできました。ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上、回答例になります。

今回は、戦略全般、マーケット・サイジング、コスト・ベネフィット分析でした。

 

それでは。

 

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引用・編集:『戦略コンサルティングファームの面接試験 難関突破のための傾向と対策』

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