【結論】成長戦略の策定についての回答例がわかる。
ケース例題24:我々のクライアントはニューヨーク・オペラ歌劇団であり、今後5年間の成長戦略を策定することを望んでいる。あなたなら、どのような点を考慮しどのようなアドバイスを彼らに与えるだろうか?
【ケース回答例】
私は、クライアントのニューヨーク・オペラ歌劇団に対して、今後5年間の成長戦略を策定するためのアドバイスを求められていると言う事ですね?
ーその通りです。
それ以外で、私が頭に入れておくべきクライアントの目的はありますか?
ーいいえ、ありません。
と言う事は、売上高の増加、コストの削減、利益の増加といった点については特別考慮する必要がないと言うことでしょうか?
ーそれらは全て、企業が成長するために不可欠な要素だと思いませんか?
おっしゃる通りです。ただ、私は自分が適切な質問できるように、きちんと確認しておきたかったのです。私の方からいくつか質問があります。業界全体の市場規模は成長してるのでしょうか?
ーいいえ。昨年度の業界全体の成長率は-7%でした。
クライアントの成長率は、業界全体と比べてどうなのでしょうか?
ー業界全体よりはマシですが、取り立てて良い数字もありません。クライアントの昨年度の成長率は+2%でした。
クライアントの競合相手はどのような企業であり、競合各社のシェアはどうなっていますか?
ーレジャー事業を営む企業はすべて競合となり得ます。範囲を広げれば、レストラン、アイスホッケーの試合観戦、リンカーンセンターで行われるイベント、フロリダへの旅行なども、競合相手と言えるでしょう。ただ、直接的な競合先と言う意味では、クライアントと同様、ニューヨークでオペラの公演を行っている劇団が挙げられます。ニューヨークにこうした劇団がいくつあるかよくわからないのですが。
ークライアントを含めて4台歌劇団が存在します。1番大きいのはメトロポリタン・オペラで、他の2つはトミー・アンド・フィガロと、バーバー・オブ・セビリアです。さて、ここからはどうしますか?
まずは、競合分析を行います。ただし、分析対象にはニューヨークのみならず、ロンドンやパリと言った、他の大都市でオペラを公演している劇団も含めます。
ー具体的に、どのようなことを分析するのですか?
一言で言えば全てです。競合各社の売上高やその収益構成、チケットの販売方法や販売価格、固定費、限界利益、演目の制作費、公演スケジュール、演目のジャンル、広告宣伝活動、その他大きなコストなどを調べます。
ーすごい量の分析ですね。その分析が終わったら、次に何をしますか?
他社のベストプラクティスを参考にして、クライアントにも導入できるものはないかを調べます。
ーあなたは先ほど、売上高の収益構成について触れましたが、現在のクライアントの売り上げ構成は、どのようになっていると思いますか?
チケット販売の収入が主で、お金やプログラムの販売、公園前や休憩時間中の飲み物の販売、CDやTシャツ等のグッズ販売といったものだと思います。また、支援者からの寄付金も貴重な収入源でしょう。
ーどうすれば、もっと売り上げが伸びると思いますか?
主に3つの方法があります。第一に、チケットの販売価格を値上げすること。第二に、大々的なマーケティングキャンペーンを展開して、劇場により多くの人を呼び込むこと。第三に、鑑賞客一人当たりの売り上げ単価を増やすことです。
ー他にも売り上げを増やす方法はありませんか?
例えば、歌唱レッスンを開くと言う案はどうでしょうか?
ーそれは、あまり現実的な案ではありません。他には何がありますか?
おそらく、オペラは年間365日公演しているわけではなく、劇場が利用されない期間も存在すると思います。劇場が利用されていない時間は、機会利益を逸しているといえます。ですから、そのような期間には、他のイベントを劇場で開催すると言うのはどうでしょうか?特に、音楽関係のイベントが良いでしょう。オペラの劇場なので、素晴らしい音響効果を生かせると思います。
ーそうですね、目に浮かぶようですね。良いでしょう。次に、チケットの販売方法についても触れていましたが、これについてはどうでしょうか?
まずは、チケット販売にインターネットを活用しているかと言うことや、劇場以外ではどこでチケットが販売されているかを調べます。そして従来とは異なる販売店を活用することができないかを考えます。クライアントは、シーズンチケットや、団体客、学生、高齢者などに対して割引販売をしていると思いますが、どうでしょう?
ーその通りです。
学生の売り込みは、潜在的なオペラのファン層を大きくすると言う意味で、効果的だと思います。われわれは常に新しい顧客層を開拓する必要があり、若い世代の人たちが、オペラに興味を持つように働きかけなければなりません。
ーその次にあなたが述べたのは、コストに関連する項目でしたね。この部分に関してはあまり時間を咲きたくありませんが、あなたであれば、コストを削減するためにあらゆる手段を考えるんだと思います。
はい、おっしゃる通りです。
ー正直に申し上げますと、ここまでのあなたの回答は、私が望んでいたものとは方向がずれてしまっています。具体的に言うと、回答があまりに詳細な部分に入り込んでしまっています。あなたに求められているのは、成長戦略の策定です。もし、この点に関して何も言うことがないのであれば、ここでインタビューは終わりになってしまいますが。
私がここまで述べてきたのは、大々的なマーケティングキャンペーンを展開して劇場にもっと多くの人を呼び込んだり、チケットやグッズの販売を伸ばすための流通チャネルを拡大したりすることで、できるだけ収入源を増やして売上高を伸ばすと言うことです。また、今までとは異なる新しい物を顧客に提供することについても触れました。ここでは、より多くの演目を公演することや、より多くの商品を販売することだけではなく、オペラとジャンルが異なる演劇や、コンサートを催すことで、オペラが講演されていない間でも劇場を観客で埋めることも含んでいます。また、今までは触れていませんが、第3の戦略として、自社より規模が小さい競合他社を買収することも考えられます。ただ、クライアントには資金的な余裕は無いように思われますし、利用できる資金は買収に使うよりも、より多くの顧客を呼び込むための諸策に使う方が良いかなと思います。
ーまとまりとしては良いですが、真新しいアイディアは特にありませんね。
最後にもう一つだけ加えさせてください。今夏、私はある投資信託会社でインターンをしたのですが、そこで分かった事は、売上高の95%がたった5%の顧客によってもたらされていた事でした。要するに、この会社は自社が要する顧客層をフル活用してさらなる成長を遂げる機会を逸していると言うことです。彼らは今まで、自社にとって本当の利益との顧客と、コストしかかからない顧客を同等に扱ってきたのです。
ー面白いですね。続けてください。
調査の結果分かったのは、彼らが新規顧客を獲得するために費やしたコストの3分の1以上が、利益を全く生まない顧客に投じられていたと言うことでした。またあるケースでは、すでに十分囲い込めている顧客に対して余分なマーケティング費用をかけてしまい、もっと有効利用できるはずのお金を無駄に使っていることもありました。
ーそれで、あなたが言いたい事は何ですか?
クライアントは、単に新規顧客を追い求めるだけでなく、本当に儲かる顧客に注力すべきであると言うことです。これは、クライアントが従来行ってきた営業活動を抜本的に変えて、利益を生む顧客とより良い関係を築くことを意味すると同時に、クライアントにとってコストしかかからないような顧客は思い切って切り捨てていくことも意味します。
ー私の個人的な意見では、そのような考え方はオペラ劇団よりも投資信託外車に適していると思いますが、新しい試みとしては評価できますね。
以上、回答例になります。
今回は、ケースのタイプ的には、成長戦略シナリオでした。
それでは。
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引用・編集:『戦略コンサルティングファームの面接試験 難関突破のための傾向と対策』
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