【結論】新製品の価格設定についての回答例がわかる。
ケース例題23:我々のクライアントは大手の自動車メーカーであり、車の燃費を従来に比して20%向上させる機器の製造を検討している。この製品の販売価格は、いくらに設定するべきだろうか?
【ケース回答例】
問題の内容を確認させてください。クライアントの大手自動車メーカーは燃費が20%向上する機器の製造を検討しており、この製品をいくらで販売すべきかを知りたがっていると言う事ですね?
ーはい。
いくつか質問があります。まず、クライアントは機器の製造に必要な技術を持っているのでしょうか?また、製品の研究開発は、既に行われているのでしょうか?
ークライアントの技術力は十分です。研究開発も既に行われており、試作品が作られ、性能テストも済んでいます。
燃費が20%向上すると言う意味は、例えば現在ガソリン1ガロンあたり20マイル走る自動車が、この機器を使えば1ガロンで24マイル走るようになるということでしょうか?
ーはい、その通りです。
この機器に何か欠点はありますか?例えば、排気ガスの増加による環境汚染に対する懸念や、車の馬力が大きく落ち込むなどといった問題はありませんか?
ー車の馬力が約5%落ちてしまいますが、それが唯一の欠点です。
この機器は、アフターマーケットで販売されるのでしょうか?それとも、新車に装備される形で販売されるのでしょうか?後者の場合、新車に標準装備されるのか、それともオプション装備にあるのか、どちらでしょうか?
ー今あなたが述べたすべての形で販売されます。2000年以降に販売された車であれば、この機器はどんな車種にも取り付け可能です。
クライアントは、特許技術を取得していますか?
ーいいえ。機器の製造に必要な技術は、自動車業界では非常にありふれたものです。メーカーさえその気になれば、1970年代初頭でも製造できた位です。
なぜ、クライアントは今までこの機器を製造しなかったのでしょうか?
ーあなたはどうしてだと思いますか?
これまでは製造コストが高すぎたからでしょうか?新しい技術が次々と発明され、ガソリンの値段が上昇している今こそが、機器販売のベストタイミングだとクライアントは考えているのかもしれません。この機器の製造コストはどのくらいでしょうか?
ー機器1台あたり20ドルです。
そのコストには、研究開発費や製造設備の購入費用も含まれていますか?
ーそれら全てを含めたコストは、1台あたり25ドルになります。
機器の取り付けは簡単ですか?
ーはい。アフターマーケットでの販売を考えた場合、平均的な取り付け費用は75ドル程度と予想されます。
分りました。では、この機器の価格戦略を考えていきましょう。まず、この危機と同様の製品は、まだ市場に出回っていないと言う理解でよろしいでしょうか?
ーまだ市場では販売されていません。
しかし、機器の製造に必要な技術は非常にありふれたものですから、もし私たちが成功すれば、すぐに他の競合が参入してくると思います。このような動きは、ガソリンの値段が非常に高いヨーロッパ地域で特に顕著でしょう。
ーまさにその通りですが、その点については、時間が許せばまた後で話しましょう。ここでは、米国市場のみに話を絞ってください。
まず、競合品との比較による価格設定ですが、市場には比較すべき商品がまだ存在しません。したがって、クライアントが検討すべき価格戦略は、コストベースの価格設定か、価値ベースの価格設定かのいずれかになります。
コストベースの価格設定から検討してみましょう。機器の製造コストが25ドルであり、これに50%のマージンを乗せて卸売業者に販売するとすれば、卸売価格は37.5ドルになります。卸売業者はこれを50ドルで小売業者に販売し、小売業者が最終消費者に75ドルで販売すると言う感じになるでしょう。最終消費者は、この機器本体の購入価格に加えて機器の取り付け費用を支払う必要があるので、トータルコストで考えた場合の購入代金は1台あたり150ドルになります。
ここで、ガソリン1ガロンの値段を3ドル、現在の平均的な燃費を1ガロンあたり20マイルと仮定すると、機器の装着した後の燃費は1時間あたり24マイルになります。車運転する人の平均的な年間走行距離は15,000マイルと仮定すると、機器装着前は年間15000 ÷ 20 = 750ガロン分のガソリンを消費し、年間のガソリンコストは750 × 3 = 2250ドルになります。一方で、機器装着後は年間15,000 ÷ 24 = 625ガロン分のガソリンを消費し、年間のガソリンコストは625 × 3 = 1875ドルとなるので、年間あたりの375ドルのコストが浮くことになります。新しい機器の購入価格は150ドルですから、半年以下で元が取れる計算です。
もう一つのアプローチは、走行距離1マイルあたりのガソリンコストを計算する方法です。ガソリン1ガロンあたりの値段3ドルを20マイルで割ると、機器装着前の走行距離1マイルあたりにかかるガソリンのコストは3 ÷ 20 = 0.15ドルであることがわかります。一方で、機器装着後は、3ドルを24マイルで割ると、走行距離1マイルあたりのガソリンコストは3 ÷ 24 = 0.125ドルとなり、1マイルあたり0.025ドルのコストが浮くこととなります。上と同様に、車を運転する人の平均的な年間走行距離15000マイルとすれば、新しい機器を取り付けることにより年間あたりのコストの浮きは、0.025 ×15000 = 375ドルとなります。さらに、もし機器の取り付けを業者に頼むのではなく自分で行うのであれば、元を取る期間はもっと短くなるでしょう。
高級車ほど燃費が悪いことが通常なので、この危機をより高い値段で販売することもできるでしょう。逆に、燃費の良さを見出している低価格の車、例えば、1ガロンあたり30マイル走行する車は、クライアントの製品を用いることによって36マイルだと燃費が向上しますが、このような車に乗っている人は、購入コストを取り戻すまで1年以上かかるようであれば、たかだか数マイルのために余計な出費は払いたくない顧客層だと思います。我々がターゲットとする顧客は、より高い燃費効率を望んでおり、資金的にも余裕があるSUVのドライバーなどが良いのではないでしょうか。また、環境保護団体に対して、この危機に地球に優しい製品としてアピールしてくれるように働きかけると言う手も考えられるでしょう。以上まとめると、クライアントの(卸売業者への)販売価格は37.5ドル、場合によっては50ドルとすることも可能だと思います。
競合他社が一気に参入してきた場合には、コスト構造を見直し、必要であれば、メキシコやアジアなどのコストが安い国で製造することも検討します。先発業者であるクライアントの強みは、規模の経済を活かせることです。今後発売される新車すべてに対してクライアント整備を装備することができたり、他社からOEMも請け負うような形にできたりすれば、販売量は膨大となります。ただし、生産工の賃金が安い企業や、原材料を安く調達できる企業が、将来的に強い競合相手となる可能性もあるでしょう。
ーそのような企業に対しては、どのように対抗すれば良いのでしょうか?
まず、品質の高さを市場にアピールすること、次に、すべての卸売業者に対して、我々が認めた正規の製品以外は販売しないように要求することが考えられます。ただ、これが問題となるのは、あと数年のみの話だと思います。
ーそれはどういうことですか?
この危機が取り付け可能なのは、2000年以降に製造された車です。車の平均的な耐用年数が10年であり、2009年以降はこの機器がすべての新車に装備されると仮定すれば、アフターマーケットでこの機器を販売する対象となるのは、2000年から2008年までに製造された車のみとなります。2009年以降は、2つの理由からアフターマーケットの市場規模が縮小し始めます。1つは、新しく市場に出る車にはすでにこの機器が取り付けられていると言うこと。そしてもう一つは、時間が経つにつれて、2000年間2008年製造された車の寿命が訪れ、その数は自然減少していくというのが、その理由です。
以上、回答例になります。
今回は、ケースのタイプ的には、価格戦略シナリオでした。
それでは。
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引用・編集:『戦略コンサルティングファームの面接試験 難関突破のための傾向と対策』
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