【結論】利益減少の原因究明と改善策の策定についての回答例がわかる。
ケース例題1:われわれのクライアントは大手の商業銀行である。この銀行の売上高は年々増加しているにもかかわらず、過去2年連続で利益が減少し、ついには赤字に陥ってしまっている。あなたは1週間後にこの銀行の頭取とミーティングを行う予定であるが、それまでに次の2つの質問に対する答えを用意しなければならない。
- 銀行の利益が減少している主な原因は何か?
- 銀行の利益を回復させるためにできることは何か?
あなたならどのような答えを用意するだろうか?
【ケース回答例】
問題の内容と目的を確認させてください。われわれの目的は、クライアントである銀行の利益がなぜ減少しているのかを突き止めるとともに、利益を回復させるための戦略を考案することだと理解しましたが、この他にも、私が頭に入れておくべき目的はありますか?
ーいいえありません。
私はこの問題を2つのパートに分けて考えたいと思います。最初のパートでは、クライアントの売上高が伸びているにもかかわらず、利益が減少してしまっている要因を突き止めます。次に、最初のパートで得た分析結果を踏まえて、クライアントの問題を解決し、利益回復の軌道に乗せるための方策を考案します。
では早速、最初のパートから取り掛かりたいと思います。このパートでは、主に3つのポイントに分析の焦点を当てます。3つのポイントとは、銀行業界全体の状況、クライアントの売上構造、クライアントのコスト構造です。
ーなるほど。よろしいのではないでしょうか。進めてください。
まず、銀行業界全体の状況を分析します。ここ2年における利益の減少は銀行業界で全体的に見られる事象なのでしょうか?それとも、クライアントのみに当てはまることなのでしょうか?また、クライアントの業界内におけるポジショニング、具体的には、マーケットシェアや競合状況について教えていだだけますか?
ー利益が大幅に落ち込んでいるのは、クライアントのみです。他にも利益が減少している銀行はありますが、クライアントほど急激な落ち込みではありません。クライアントは業界における大手銀行の一つであり、20%のマーケットシェアを誇っています。クライアントのの他には、全国に店舗を持つ大手クラスの銀行が3行存在し、各行がクライアントと同程度のマーケットシェアを持っています。この他、比較的規模の小さい地方銀行が多数存在します。他に何か聞きたいことはありますか?
クライアントの利益減少は、業界全体の問題ではなく、クライアント独自の問題に起因しているということですね。次に、クライアントの売上構造とコスト構造について調べます。銀行の売上高は、主に金利収入と手数料収入から構成されていると仮定します。コスト構造については、主な変動費、固定費に分けた上で、双方について分析を行いたいと思います。
ー銀行の売上高が、主に金利収入と手数料収入で構成されるというあなたの仮説は正しいです。クライアントについて言えば、金利収入が売上全体の70%を占め、残り30%が手数料収入になります。ただ、ここで次のグラフを見て、このグラフから何が読み取れるかを私に教えてください。ちなみに、クライアントは現在8百万人の顧客を抱えています。
これはとても興味深いグラフですね。クライアントの顧客数が8百万人だとすれば、顧客一人当たりの平均コストが平均売上高を上回っており、つまりは、赤字になっているということです。それぞれの要素について分析を掘り下げていきたいと思います。
クライアントの顧客一人当たり平均売上高が右肩下がりになっている原因としては、いくつかの仮説が考えられます。銀行の売上規模が拡大するにつれて、新しい顧客を取り込んでいくことになりますが、銀行にとって、これらの新規顧客は既存の顧客に比べて儲けが少ないのが通常です。具体的な例で言えば、銀行が新規に獲得する顧客は医者や弁護士といった高収入の職業ではなく、学生や低賃金の労働者である場合が多く、銀行にあまり多くの売上高をもたらさないまで、顧客が増えるにつれて顧客一人当たりの平均売上高は返照し、グラフの示されているような右肩下がりになるものと考えられます。
次にコスト面について分析すると顧客一人当たり平均コストが右肩下がりではなく、水平になっている点が特徴です。これはつまり、規模の経済が働いていないことを意味しています。クライアントが新規顧客を獲得するにつれて、コストもそのまま比例的に増加してしまっているというのが、考えられる要因です。
ーなかなか鋭い分析ですね。あなたの指摘はほとんど正しいです。実は、クライアントの人事考課制度では、新規顧客の獲得数が評価対象となっていたために、営業マンは既存の顧客に比べて儲けが少ない顧客でもお構いなしに増やしていったのです。さらに、どんどん増加していく顧客に対応するため、クライアントは積極的に支店網を拡大し、銀行員の数も増やしていきました。クライアントは今後どうするべきでしょうか?
ここまでの分析によって、クライアントの利益が急激に減少している要因は儲けの少ない新規顧客が増加していることと、新規顧客の増加に対してコストも比例的に増加してしまっていることであることがわかったので、解決策は自ずとこれらの原因に対処するものになります。単純な解決策としては、儲けの少ない新規顧客はこれ以上増やさないとともに、拡大した支店網と銀行員の縮小やリストラを進めることによって、クライアントに利益を従来の水準に戻すことが考えられますが、これは理想的な方法とは言えないでしょう。
これより良い2番目の解決策としてあげられるのは、顧客一人当たりの平均売上高を増加させつつ、同時に顧客一人当たりの平均コストを低下させることです。例えば、平均売上高を増加させるための方法として、金利収入の増加につながるような新しい商品を考えたり、顧客に請求する手数料をあげることが考えられます。次に平均コストを低下させるための手段としては、業績の悪い支店の閉鎖や銀行員のリストラが効果的でしょう。
しかし、ここで私が提案する解決策は、2番目の解決策よりも、さらに良い結果をもたらすものだと考えます。私のアイデアは、クライアントが抱える顧客を上位顧客から下位の顧客まで、いくつかの客層にセグメント化して、各セグメントに応じて提供するサービスの質や請求する費用を変えるというものです。例えば、預金額が高額の顧客に対しては個別の担当者をつけて、いつでも無料で担当者ととコンタクトをとれるようにしたり、彼ら一人ひとりのニーズに柔軟に対応できるような新しいサービスを提供します。
一方で、銀行にとって儲けが少ないセグメントの顧客、特に学生を中心とする顧客に対しては、ATMやオンラインサービスの利便性をもっとアピールして、これらの銀行にとって安価なシステムを利用するように働きかけることが必要です。彼らが銀行の窓口を利用することは、クライアントにとって大きなコスト負担となります。そこで、下位のセグメントに属する顧客が無料で銀行窓口を利用できるのは月に2回までに制限して、3回目以降の窓口利用については1回あたり300円の手数料を徴収することにします。つまり、われわれは顧客にがクライアントに提供する価値、すなわち、銀行にとっての顧客価値に応じたサービスを提供するというビジネスモデルを取り入れるのです。このビジネスモデルは、各顧客のセグメントのニーズに合ったサービスを提供することをつうっじて売上高を増加させるとともに、銀行にとって価値が低い顧客を安価なシステムに誘導することを通じてコスト削減を実現し、クライアントの目的の双方を満たすものとなるでしょう。
ーわかりました。ありがとうございます。
以上、回答例となります。
今回は、ケースのタイプ的には、利益増加のシナリオでした。
それでは。
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引用・編集:『戦略コンサルティングファームの面接試験 難関突破のための傾向と対策』
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