【結論】自社活動か外部委託かの選択についての回答例がわかる。
ケース例題17:我々のクライアントであるメーカーが、外部の企業に物流機能をアウトソーシングすることを検討している。この度、新しい規制が導入されて、商業用トラックは、運転中の平均速度、最高速度、連続運転時間、ドライバーの休憩時間等の走行記録を電子保管して、そのデータを提出しなければならなくなったため、もしクライアントが今までと同様に物流機能を自ら行うのであれば、何でも所有しているトラック全てを改良しなければならない。
クライアントの社長は、物流機能を他社にアウトソーシングすべきか、それとも、トラックを改良して従来通り自社で物流を行うべきかについて、あなたのアドバイスを求めている。
【ケース回答例】
問題の内容確認させてください。クライアントは、物流機能を他社にアウトソーシングすべきか、それとも、トラックを改良して従来通り自社で物流を行うべきかについてのアドバイスを求めていると言う事ですね。このほかに、私が留意しておくべきクライアントの目的はありますか?
ーいいえ、ありません。
どちらを選択すべきかを決めるにあたって、私は大きく2つの要因を考慮したいと思います。1つは、各選択肢の経済的な効果であり、もう一つは、それに伴うリスクです。
まず、経済効果については、トラックの改良に要する投資額と、アウトソーシングを行うことによって発生するコストの金額を比較します。
次に、リスクについては、内部的なリスク要因と外部的なリスク要因の双方を検討します。内部的なリスク要因として挙げられるのは、社内の文化や労働者に与える影響、例えば、ストライキの発生などが考えられます。外部的なリスク要因として挙げられるのは、マクロ経済指標、例えば、ガソリン価格の変動や、政府の規制、競合の動きに対する柔軟性などが考えられます。
ー良いでしょう。どこから始めますか?
まずは経済効果の面から分析します。物流機能をアウトソーシングする場合のコスト、自社で物流活動を行う場合のコスト、トラックの改良に要する投資額は、それぞれいくらでしょうか?また、クライアントは基準としている、投資額の回収期間はどれぐらいでしょうか?
ートラックの改良には、合計で1億円の投資が必要となります。なお、この金額は、中古の株トラックの下取り売却価格も考慮された数字です。実際のところ、現在所有しているトラックはどれも古く、交換時期が近づいているので、いずれにせよ新しいトラックを購入する必要があると考えていたところでした。また、クライアントの社内では、投資額を4年以内に回収することを条件としています。
ー自社で物流活動を行う場合のコストと、物流機能をアウトソーシングする場合のコストについては、次の表を参考にしてください。
コストを比較するためには、自社で物流活動を行う場合の人件費を求めることが必要なので、いくつか質問させてください。トラックの運転手は何人いて、彼らの平均年収はいくらでしょうか?
ー運転手の人数は10名で、クライアントは給与と福利厚生含めて一人当たり月500,000円のコスト負担しています。
と言う事は、年間の人件費は500,000円×12ヶ月× 10名= 60,000,000円ですね。これを年間配送数の400で割ると、1回の配送あたりの人件費は150,000円となります。したがって、1回の配送あたりにかかる合計コストは、自社物流で200,000円、アウトソーシングで250,000円となり、自社物流の方が50,000円安く、これに年間配送数の400をかけると、年間では自社物流によって20,000,000円のコストが削減されることになります。しかしながら、自社で物流活動を行う場合には、トラックの改良に1億円の初期投資が必要となるので、投資回収期間が5年となり、クライアントの4年以内と言う条件を満たしません。
ーどうやって5年と言う投資回収期間を求めたのですか?
初期投資の1億円を、年間のコスト削減額20,000,000円で割ってまとめました。
ー分りました。それで、あなたのアドバイスはどうなりますか?
経済効果の面だけを見れば、クライアントの物流機能を外部企業にアウトソーシングすべきであると言うことになりますが、最終的な判断を下す前に、アウトソーシングを行う場合のリスク要因についても検討したいと思います。
先ほども触れましたが、リスク要因には内部的なものと外部的なものがあります。内部的なリスク要因として考えられるのは、従業員に対する影響です。アウトソーシングを選択すれば、10人の解雇しなければなりませんし、彼らや他の従業員がストライキを起こす可能性についても考慮する必要があります。
ー良い指摘です。しかし、トラックの運転手は労働組合に入っていないので、従業員に対する影響は軽微だと考えてください。他には何かありますか?
はい。外部的なリスク要因の面から考えると、アウトソーシングにはいくつかのメリットがあります。アウトソーシングを選択することによって、特に長期契約を結ぶ場合にはそうですが、ガソリン価格が高騰するリスクや、政府の規制変更によるリスクを自社で負わなくてもなくてすむようになります。また、将来的にクライアントの事業規模が拡大して物流機能を強化しなければならない場合でも、アウトソーシングであれば弾力的に対応することが可能です。
ー素晴らしい答えです。ここでちょっと視点を変えてみましょう。クライアントによって、自社で物流活動行う方が得策となるようにするには、どうすれば良いでしょうか?
関連する数式を使って考えてましょう。自社で物流を行う方が得策となるためには、「トラックの改良に必要な初期投資額÷自社の物流を行うことによる年間コスト削減額<基準となる投資回収期間」と言う式が成り立つ必要がありますこの式を満たすためにクライアントがとるべき行動は、大きく以下の3つになります。
- 初期投資額を下げる。このためには、新しいトラックを自社で買うのではなく、リースを利用してから他社から借りると言う方法が考えられます。
- 基準となる投資回収期間を、現在の4 年よりも長くする。
- 自社物流による年間コスト削減額を大きくする。これには、いくつかの方法が考えられます。
- 年間の配送回数を増やす。例えば、他の小規模な企業の配送も請け負って、ドライバーの作業効率を高めると言うことが考えられます。
- 物流機能全体ではなく、メンテナンスの部分だけをアウトソーシングすることにより、修繕、維持費を抑える。
- トラックの最適配送ルートを自動的に決定してくる新しいソフトウェアを導入することによって、ガソリンのコストを軽減する。
ーすばらしいアドバイスです。ありがとうございました。
以上、回答例となります。
今回は、ケースのタイプ的には、コスト削減シナリオ/コスト・ベネフィット分析でした。
それでは。
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引用・編集:『戦略コンサルティングファームの面接試験 難関突破のための傾向と対策』
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