【戦略コンサル対策】ケース例題13:スマートカード事業への新規参入_バリューチェーン分析

【結論】バリューチェーン分析についての回答例がわかる。

ケース例題13:我々のクライアントは、GEのような多国籍企業であり、多くの事業部門を抱えている。その中でも規模が大きい部門は、金融サービス部門、コンピューターチップ製造部門、医療機器部門、自動車保険部門、レーザーセキュリティー部門である。

 彼らはスマートカードの市場に参入したいと考えており、スマートカード事業のバリューチェーンの中でどの領域に参入すればよいか、そして、どのような方法で参入すべきかについてのアドバイスを求めている。なお、クライアントのCEOは、この事業にできるだけ多くの事業部が関与することを望んでいる。

 

【ケース回答例

 問題の内容と目的を確認させてください。クライアントは、金融サービス部門、コンピューターチップ製造部門、医療機器部門、自動車保険部門、レザーセキュリティ部門といった多くの事業部を抱える多国籍企業であり、できるだけ多くの事業部門が関与するような形でスマートカード事業に参入したいと考えている。そして、スマートカード事業のバリューチェーンの中でどの領域に参入すべきかについて、我々のアドバイスを求めていると言うことでしょうか?

 

ーその通りです。

 

このほかに、私が頭に入れておかなければならない目的はありますか?

 

ーいいえ、ありません。

 

スマートカードとはどのようなものか、教えていただけますか?

 

ー米国で利用されている一般的なデビットカードまたクレジットカードには、カードの裏面に磁気帯が付いています。磁気帯には顧客の情報が埋め込まれており、店のスタッフがカードを読取装置に通すだけで、買い物の決済が行われます。一方、主にヨーロッパやアジアで使われているスマートカードは、顧客情報は暗号化したICチップが搭載されており、カードを利用する際には暗証番号の入力が必要となります。暗証番号を使うことによって、セキュリティーが良い高められると言う利点があります。

 

 スマートカードは米国で既に利用されているのでしょうか?

 

ーいいえ、現在はまだ使われていません。

 

 それはなぜですか?

 

ー第一に、製造コストが高いからです。磁気帯のコストが0.85ドルであるのに対して、ICチップは2ドルのコストがかかります。また、米国では各店舗に置かれているレジと中央端末間の電子通信網が発達しているので、不正利用の発生が低く抑えられています。さらに、異なる暗証番号を何個も覚えたくないと言う米国人の性格によるところも大きいでしょう。しかし一方で、スマートカードには、専用の読み取り装置にかざすだけで支払いができる非接触型の決済機能と言うメリットがあります。「より早く、より簡単で、より安全」というのが、スマートカードの売りです。

 

 クライアントは、競合のカードと差別化できる技術を持っていますか?

 

ーそのような技術はないと考えてください。

 

 スマートカード事業のバリューチェーンは、どのような活動領域で構成されているのでしょうか?

 

ーあなた自身で考えてみてください。

 

 論理的に考えると、カードの開発・製造、情報端末機の製造、売買取引の処理、情報端末機のメンテナンスが、主な活動領域になると思います。

 

ー主な領域は、それで抑えられています。

 

それぞれの活動領域について、もっと詳しい情報が欲しいのですが。

 

ー良いでしょう。これを見てください。(面接官が、下の表を手渡す)

 

 この表を詳しく分析するための時間をいただけますか?

 

ーどうぞ。

 

 

(数分間、表の分析を行う)

 

 私は、それぞれの活動領域について、期待られる利益、戦略適合性(つまり、クライアントの戦略とどれくらいうまくフィットするか)、競争の激しさ、リスク、そして、適切な参入方法を分析したいと思います。まず、カードの開発・製造ですが、投下資本1ドルあたりの期待利益は、1ドル× 25% × 15% = 0.0375ドルと計算されます。戦略適合性、競争の激しさ、リスク、適切な参入方法については、他の活動領域もあわせて、表にまとめてみたいと思います。

(以下の表を作成する)

 

 

 期待利益が1番大きい領域は売買取引の処理であり、リスクも低く、競争の激しさは平均的です。この領域には、既存企業を買収するか、金融サービス部門の取引処理センターの業務を拡大させることによって参入し、マーケットシェア獲得していくことができるでしょう。ただ、ここで1つ気にかかるのは、戦略適合性です。この観点から言えば、カードの開発・製造の方が優先度が高いと考えます。期待利益は売買取引の処理を若干下回る程度ですし、戦略適合性が高く、競争も穏やかで、リスクは許容範囲内であると判断します。

 

ーここで、市場規模の推定をしてほしいと思います。米国では、現在何枚のクレジットカードが発行されていると思いますか?

 

 

 まず、米国の総人口を3億人と仮定します。全人口を20歳以下、21歳〜40歳、40歳〜60歳、61歳以上の4つの世代に分類し、それぞれの世代には同じ数の人口が存在すると仮定します。すると、各世代の人口数は、300 ÷ 4 = 75,000,000人になります

 

 

 20歳以下の世代は、大部分の人が自分自身のカードを持っていないと考えられるので、15人に1人の割合で計5,000,000枚のカードが発行されていると推測します。20〜40代の世代は、全体の半数を少し上回る40,000,000人の人が少なくとも1枚のカードを保有し、そのうち20,000,000人は1人で2枚、10,000,000には1人3枚のカードを持っていると仮定します。すると、この世代に対するカードの発行枚数は70,000,000枚になります。41〜60歳の世代は、収入が増える一方で、ローンを抱えている人も多いので、60,000,000人の人が少なくとも1枚のカードを保有し、うち40,000,000人は2枚、20,000,000人は3枚のカードを持っている仮定すると、カードの発行枚数は1億2000万枚になります。61歳以上の世代は、多少保守的になるので、60,000,000人が1枚、うち45,000,000人が2枚のカードを保有すると考え、カードの発行枚数は1億500万枚となります。以上全てを合計すると、米国では一般消費者に対して、合計3億枚のクレジットカード発行されていると推測されます。

 

 

 次に、会社として利用されているクレジットカードを考えると。

 

 

ーそこまでで結構です。あなたのロジックについては分かりましたし、時間も限られてきました.。ただ、実際には米国で約10億枚のクレジットカードが発行されており、年間2兆ドルの取引が行われていることを伝えておきましょう。また、米国の一般消費者のうち、14%の人が1人で10枚以上のクレジットカードを持っているというのが実態です。

 

 

ーさて、あなたはスマートカードが従来のカードとさほど変わりばえしないことにがっかりしているようですが、ここでクライアントが生体認証機能を備え、スマートカードやクレジットカードに埋め込むことができる新しいセキュリティー技術を開発したと仮定しましょう。これは、カードに刻印された指紋の上に親指をかざさなければ、カードを利用することができないと言うものです。ここで問題となるのは、利用者がいちいち親指の指紋を読み取らなければならないと言う事ですが、あなたはこの技術を採用することについてどう思いますか?

 

 セキュリティー機能が高まると言う点については消費者も望むところだと思いますが、どうやって彼らの指紋を採るかと言う問題に加えて、指紋の読取処理にかかるコストが高くつくのではないでしょうか?

 

ーその通りです。指紋の読み取り処理と新しいICチップの搭載には、カード1枚あたり100ドルのコストがかかります。

 

 

 スマートカード用のICチップが2ドルであるのに対して、100ドルと言うのは大きな数字ですね。

 

 

ーそうです。ただこの技術は従来と比較してかなりセキュリティーが高まると言うのも事実です。先ほど、クレジットカードの年間取引高が2兆ドルに上ると言いましたが、このうち5%の金額と言ったらいくらに相当しますか?

 

 2兆ドル20%が2000億ドルなので5%は1000億ドルです。

 

ーその通り。ですから、仮にこの技術を採用することによって、不正利用による被害を半分に減らせるとすれば、十分採算に合う計算となります。しかし、これでもまだ、「利用者の指紋をどうやって取るか?」と言う問題が残ります。

 

 実は、来月私の誕生日があります。

 

 

ーそれはおめでとうございます。しかし、それがこの問題と何の関係があるのですか?

 

 

 私は次の誕生日に、5年ごとの免許の書き換えをしなければなりません。免許更新する際には、新しい写真を撮りますが、この時指紋も採ると言う考えがあっても良いはずです。仮にカリフォルニア州の例では、免許の更新時に私たちが支払う手数料以外に、25ドルの経費を州が負担しているとしましょう。そして、クライアントが指紋読み取り装置を提供し、この25ドル分の経費を州に代わって負担する見返りとして、ドライバーの指紋採取を州に行って行も行ってもらうと言う考えはどうでしょうか?州側としても、採取した指紋をデータベースに保管するなど、クライアントの技術は自分自身のために利用したいと思うかもしれません。

 

 また、免許証を他の用途にも利用できるようにすると言う提案をすることも考えられます。例えば、表面は免許証として、裏面はデビットカードあるいはクレジットカードとして利用できるといった具合です。このカードには、通常カスタマー・ロイヤリティー・プログラムを付与するだけでなく、利用者が怪我をした場合に備えて、必要な医療情報を任意で記録できるようにします。この案が採用されれば、初めて免許を取得して、同時にクレジットカードを作る人全員をクライアントの顧客として取り組むことができます。

 

 

 

ーそれは非常に良いアイディアですね。しかし、中には個人の自由意志を主張して、我々が指紋を採取し、それをデータベース保存することに強く反対する人がいることも考えられます。これらの人々や、未成年の若者にクレジットカード発行する事は間違っていると主張する活動団体に対しては、権利放棄書にサインしてもらわなければならないでしょう。しかしここではそれらの問題は対処可能と考えることにしましょう。あなたのアイディアを実行するためには、いくらの投資が必要でしょうか?

 

 カリフォルニア州の人口を36,000,000人とします。先程と同様、これを4つの世代に分類し、各世代の人口数は同じであると仮定します。

 

 

 20歳以下の世代には9,000,000人の人がいますが、カリフォルニア州で免許を取ることができるのは17歳以上の人だけです。したがって、9,000,000人を20で割り、これに4 (17〜20歳)をかければ、免許を取る資格がある人は1,800,000 (9 ÷ 20 × 4)となります。しかし、この全員が免許を取得するわけではないので、実際に免許を取る人は、全体の半分強の1,000,000人であると仮定します。

 他の3つの世代に関しては、9,000,000人のうち8,000,000人が免許証を持っていると仮定すると、カリフォルニア州で免許を取得している人の合計は25,000,000人になります。免許の書き換えは5年に1度行われるので、年間5,000,000人が更新手続きを行うこととなります。ドライバーが免許更新する際には、州側に25ドルの経費が発生しますが、これをクライアントが肩代わりするので、そのコストは25ドル× 5,000,000人 = 1億2500万ドルです。

 次に、指紋の読み取り処理にかかるコストですが、この案が優れているのは、州内にはすでに自動車管理局のオフィスと従業員が存在すると言う点です。これにより、固定費の一部が削減できるので、指紋の読み取り処理は100ドルのコストが丸々かかるのではなく、クライアントが州に支払うのは25ドルのみですむと仮定すれば、コストの合計額は1億2500万ドルとなります。さらにクライアントが州に提供する指紋読み取り装置のコストも当然かかります。カリフォルニア州には自動車管理局の支局が100あり、それぞれの支局に対して5体の読み取り装置を提供し、読み取り装置の製造・設置コストは1台あたり300ドルだと仮定すれば、合計で150,000ドル(300 × 100 × 5)のコストになります。

 これと同じビジネスモデルを他の50州にも導入すれば、5年以内には米国内の既存ドライバー全員を取り込むことができます。また、この際には、新しい生体認証機能に対応する端末の製造も必要となります。もしわれわれが、売買取引の処理と端末機器の製造も自らの手で行うのであれば、スマートカード事業のバリューチェーンの全領域をカバーすることになります。

 

以上、回答例となります。

今回は、ケースのタイプ的には、新規市場参入シナリオ、マーケット・サイジングでした。

 

それでは。

 

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引用・編集:『戦略コンサルティングファームの面接試験 難関突破のための傾向と対策』

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