【戦略コンサル対策】ケース例題10:ペルシャ絨毯販売会社_利益低下の原因究明と改善案の策定

【結論】利益低下の原因究明と改善案の策定についての回答例がわかる。

ケース例題10:われわれのクライアントは、高級ペルシャ絨毯を販売する会社であり、利益が低下していることに頭を悩ませている。利益が低下している原因と、利益回復のために何ができるかを示してほしい。


 

【ケース回答例

確認させて下さい。私の目的は高級ペルシャ絨毯を販売しているクライアントの利益が減少している原因と、利益を回復させるために何ができるかを示すことですが、これ以外にも私が頭に入れておくべき目的はありますか?

ーいいえ、ありません。

 まずは、私が行う分析の全体像を示してから、その後でいくつかの質問をしたいと思います。

(メモ帳の上に、?(P=RーC)?を書きとめる)

 最初に、利益が低下しているという現象がクライアント独自の問題なのか、それとも業界全体に共通する問題なのかを判断するために、業界や市場といった外部環境状況を分析します。例えば、新しい競合が市場に参入しているか、全般的な景気動向はどうなっているか、クライアントの独自の力ではコントロールできないようなことが生じているかということを調べます。

 次に、クライアント内部の要因を売上の面から分析します。具体的には、クライアントの売上構造はどうなっているか、売上高を構成している各要素は、それぞれ売上全体の何%を占めているか、各要素の構成比に大きな変化が見られないかという点を検討します。

 売上面の分析に続いて、コスト面の分析を行います。ここで検討するのは、主な変動費と固定費は何か、最近大きく変化したコストはないか、異常値を示しているコストがないかという点になります。

 最後に商品の販売量を増やすために何かできることがないかを調べます。

ーわかりました。全体像としては良いプランだと思います。

 いくつか質問をしてもよろしいでしょうか?

ーどうぞ。

 利益が低下しているという問題は、業界全体に共通するものでしょうか?

ーはい、そうです。

 クライアントの成長率は、業界全体と比較してどうなっていますか?また、クライアントと競合関係にある企業は存在しますか?

ークライアントの売上高は以前と比べて50%も減少していますが、マーケットシェアは変わっていません。また、クライアントと直接競合する企業は存在しません。

 クライアントが販売しているペルシャ絨毯の特徴について、もう少し詳しく教えていただけますか?

ー彼らが販売しているのは高品質で高価な絨毯であり、1枚あたりの販売価格は5百万円、クライアントの粗利(売上高ー仕入原価)2百万円です。今年度の平均的な売上枚数は月当たりの売上枚数が2枚、年間売上高は300百万円でしたが、現在は月当たりの売上枚数が2枚、年間売上高は120百万円まで減少しています。

 全般的な景気動向はどうなっていますか?

ー景気動向そのものは、クライアントのビジネスにはほとんど影響を与えていないと考えて下さい。

 クライアントの主な顧客は誰でしょうか?

ーホテル、一般企業、富裕層の個人客が主な顧客です。

最近、顧客の嗜好が変わってきたということがはありますか?

ー良い質問ですね。その通り、顧客の嗜好は変化しています。最近では、カジュアル的な雰囲気をこのむ会社が増えていることから、企業内部の装飾も変わってきており、ペルシャ絨毯は徐々に取り除かれる傾向にあります。

クライアントのコスト構造はどうなっていますか?コストの一覧表のようなものはありますか?

ーはい。年間コストの一覧は次のようになっております。

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コスト項目:金額/年

店舗賃借料・光熱費:2百万円

人件費:15百万円

広告宣伝費:5百万円

在庫維持費用:24百万円

物流・輸送費:1百万円

合計:47百万円

※絨毯一枚あたりの仕入原価3百万円は、仕入れた時点ではなく、実際に商品が販売された時点でサプライヤーに支払われる。商品は販売されるまでは、在尾の維持費用のみが支払われる。

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これが全てのコストでしょうか?

ーいいえ。これ以外に、絨毯の仕入原価が1枚当たり3百万円かかります。

 表の47百万円の他に、仕入原価が3百万×24枚=72百万円加わるので、クライアントの年間利益は120ー(47+72)=1より、わずか1百万円しかないということですね。

ーその通りです。

 昨年と比較して、大きく変化したコストはありますか?

ーいいえ、そのようなコストはないと考えて下さい。何か気にかかることがありますか?

 2点あります。まず、人件費についてです。昨年に比べて売上枚数が半分以下になっているのであれば、営業スタッフを何人か解雇して、人件費を削減すべきだと考えます。

ー1枚につき5百万円もの値段を支払う顧客からしてみれば、それに見合うカスタマーサービスを望むのが当然です。クライアントは、顧客が億万長者のように感じることができるサービスを常に提供する必要があります。また、営業スタッフはクライアント企業で長年働いているので、販売商品に関する知識も豊富ですし、リピーターの顧客も抱えています。

 人件費がこんなに高いと言う事は営業スタッフに対する給与は歩合制になっていないと思われます。彼らに対する固定給の部分を少なくして、大部分を歩合制にすることはできないでしょうか?

ーそれはできません。もしそのようなことをすればいいっていいよ、彼らはクライアントののクライアントの元を離れて、競合の所へ行ってしまうでしょう。

分りました。次に気になるのは在庫維持費用です。この金額が大きすぎるように見えます。

ー事実、大きいです。

 この費用は、クライアントにとって大きな負担となっています。これらを減らすことはできないでしょうか?

ーもちろん、手持ちの在庫を販売すれば、維持費用は減少します。

 クライアントは、商品の販売量を増やす必要があります。もし販売価格の値引きを行ったら、販売量はどうなるでしょうか?

ーペルシャ絨毯の値段を4百万円に下げれば毎月の販売枚数は3枚となり3百円まで下げると毎月の販売枚数は5枚となります。

 1枚4百万円の絨毯が毎月3枚売れると言う事は、年間の売上高は36枚× 4百万円 = 144百万円円となり、現在に比べて24百万円増加します。さらに、在庫維持費用が現在よりも12枚分削減されます。しかしながら、値下げを行った場合、クライアントの売上高は確かに増加しますが、利益はさらに減少してしまいます。

ーどうしてですか?

 現在、クライアントの粗利は1枚あたり2百万円で、年間24枚の絨毯を売っているので、年間の粗利合計は48百万円になります。1百万円を値下げを行った場合、1枚あたりの粗利は1百万円で、年間36枚の絨毯を販売するので、粗利合計額は36百万円になります。したがって、在庫維持費用の削減効果が12百万円以上にならない限り、クライアントは現在の販売価格を維持したままの方が良いと言うことになります。

 絨毯の値段を300万円まで値下げする場合は、仕入原価と同額で販売することとなってしまいます。在庫維持費用を削減することができますが、粗利自体がゼロなので、その他のコストがそのまま赤字となってしまいます。

ー値下げ以外に、絨毯の販売量と売上高を伸ばす方法は考えられますか?

 はい。私自身、何か欲しいものを買えない場合には、それを借りると言う手を考えます。

ーつまり、絨毯をリースで貸すと言うことですか?

はい。

絨毯をリースすることの長所と短所を教えてください。

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長所

  • より大きなマーケットが期待できる。
  • アフターサービスによって新しい収入源を得ることが期待できる。

短所

  • 商品の希少価値が少なくなる。
  • 仕入れ原価をカバーできない恐れがある。
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 長所としては、より大きなマーケットが期待できると言うことと、リースを4ヶ月ごとに絨毯をクリーニングすると言うようなアフターサービスを行うことによって、新しい収入源を得ることができるといった点が挙げられます。一方、短所としては、商品の希少価値が少なくなってしまうことや、リース料の徴収では、絨毯の仕入原価をカバーできない恐れがあると言うことが考えられます。

ー分りました、結構です。仮に、販売価格5百万円のペルシャ絨毯を、1年あたり90万円のリース料で2年借りることができるとした場合、毎月5枚の絨毯がリースに出されると仮定しましょう。

 それは、毎月2枚が販売される分に加えて言う意味ですか?

ーそうです。これは、クライアントにとって良い案でしょうか?

 在庫維持費用は、1枚あたりいくらでしょうか?

ー年間の維持費用は、1枚あたり20万円です。

 と言う事は、現在の手持ち在庫は120枚と言うことになりますね。

ーその通りです。

 毎月5枚の絨毯がリースに出されると言う事は、年間で60枚と言うことになりますから、リース料は60枚× 90万円= 54百万円になります。一方で、この絨毯はまだ販売されていないので、今まで通り1枚20万円、合計で20万円× 60枚= 12百万円の在庫維持費用がかかります。

 

 リース期間の2年間が過ぎた後は、返却された絨毯をいくらで販売できるのでしょうか?

ー4百万円です。

 ここまでのところを整理させてください。絨毯1枚あたりの仕入れコストは3百万円ですが、これは仕入れた時点で支払われるものではなく、実際に販売されるまでは1枚あたり年間20万円の在庫維持費用のみかかります。リース期間は2年間なので、リース期間中における1枚あたりの在庫維持費用は合計40万円になります。絨毯のリース料は年間90万円、2年間180万円となりますので、2年間の収支は140万円のプラスとなります。さらに、リース期間後に返却された絨毯を400万円で販売すれば、100万円の粗利が得られます。したがって、絨毯も2年間リースに出して、その後に販売すれば、1枚あたり240万円の利益が得られることとなります。

 一方で、新しい絨毯を販売した場合の利益は、1枚あたり200万円ですから、リースを使用する事は、クライアントの売上高と利益を伸ばす方法として有効な手段であると考えます。リース料から得られるキャッシュフローは、在庫維持費用を十分カバーしますし、2年後に返却された絨毯を販売する際にも利益が得られます。

 

ーすべてのコストが今までと変わらないと仮定した場合、クライアントの来年度の利益はどうなりますか?

 クライアントの損益計算書は、下記のようになります。

 このP/Lの通り、クライアントの利益は1百万円から55百万円に増加します。これとて、過去のよき時代に比べれば少ない数字かもしれませんが、2年後にリースから返却された絨毯がすべて400枚で販売された場合には、さらに60百万円(1百万円×60枚)の利益が上乗せされることとなります。

 

 

 

 

以上、回答例となります。

 

今回は、ケースのタイプ的には、利益増加シナリオ、ナンバー・ケース、損益計算書(P/L)でした。

 

 

それでは。

 

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引用・編集:『戦略コンサルティングファームの面接試験 難関突破のための傾向と対策』

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